第二章 その男、鯨飲につき

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昼食はうどんだった。 ばあちゃんはとろろ昆布と梅干し、私は天かす、半裸男には玉子をのせ、それぞれ好みのうどんをカスタマイズする。 おかずには、昨日の残りのきんぴらごぼうとほうれん草のおひたし、海苔の佃煮が並べられた。 半裸男の前にはご希望の酒を、とりあえず一升瓶を1本置いておく。 ばあちゃんと私だけとはいえども、女しかいない所帯でいつまでも半裸でいられても困るため、お父さんのTシャツを着てもらった。 半裸でボロい袴しか履いてないから分からなかったが、以外なまでの整った体格に少し驚いた。身長も高いし脚も長い。やや細身だが、適度に筋肉も付いて全体的に引き締まっている。 髪はボサボサだけど、面長で彫りの深い、整った顔立ちをしている。 おそらく、普通の格好をしていれば普通に異性にモテる人なのだろう。 律儀にも半裸男は自ら申し出て、ばあちゃんの代わりに畑で草むしりをしている。 言動が少し突飛なだけで、悪い人ではないのかもしれない……饅頭泥棒の容疑者ではあるけれど。 食事の準備を終えて半裸男を食事に招くと、予想通り即座に一升瓶に手をかけた。 「酒はこれか?」 「…はい。ビールとかの方が良かったら……!?」 “メリッ” 瓶の王冠に人差し指を引っ掛けると、そのまま素手でめくるようにひっこ抜く。 「!?」 「これで良い」 (あり得ない、素手で!?牛乳瓶の紙のフタじゃないんだから……) 「あらあら、栓抜きあったのにねえ」 ばあちゃんはあくまで動じなかった。多分この人は、根っからの天然なんだろう。 「いただきます」 「いただきまーす……」
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