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「そうやって、自分を責めないでください」
「……弥生、私は」
触れられた所から、彼女の温度が伝わる。そのままそっと、頭から手が外された。
暖かく心地よい温もりに、張り詰めた心が少しずつ緩んでゆく。
「こうして助けに来てくれて、本当に嬉しかったです……きっと」
肩に軽く頭が預けられる。
「きっと、何とかなります。大丈夫です。
……だから、あなたが心を痛めることはないんです」
言葉こそ気丈だが、声の端には涙が滲んでいた。
彼女だって不安なのだ。しかしこうやって私を元気付けようと、心をくだいてくれる。
私だけ沈んでいる場合ではないと、気を奮い立たせた。
「……ありがとう」
頭を撫でると、私とは対照的に綺麗な黒髪がさらりと揺れた。
今はただ、彼等を信じて待つしかない。
(あの方が問答鬼になど、負けるはずもない)
ふと、扉の向こうから複数の足音が聞こえた。
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