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第十ニ章 幕引き
「童子様!」
扉を開けようとしたら、自動ドアさながらに勢いよく扉が開く。
「宮代さん!」
「篝!」
目の前には心配そうな顔をした土地神様と幸野さんが立っていた。
「良かった……皆、無事かい?」
「先生と黒部さんが、結構重症なんです。早く救急車を呼ばないと……」
「その必要はありません」
土地神様の後ろから、少し引くしゃがれた女の人の声が響く。
「貴方達は、謝罪も兼ねて八島家で手当てをさせて頂きます。どうか当家にお越しください」
着物姿の妙齢の女性が、しずしずと前に出てくる。
歳の頃は30後半から40くらいだろうか。深い紅色に銀と黒の糸で家紋のような模様が施された紬をきちっと着こなし、真っ直ぐにのびた背筋。
「失礼ですが、あなたは……?」
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