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「猛(*1)…結乃(*2)も、どうして……?」
「まだ、あなたは分からないのですか」
ぴしゃりと強い調子で言い放つと、お婆さんは先輩にすっと近づいた。
「どれほど己の心を殺そうと心を砕いても、決して断てぬ縁はあるのです。
2人はあなたを助けてやってくれ、罸なら自分たちが受けると、私に頭を下げに来たのですよ」
「え……」
半裸男は男の子に歩み寄ると、背負っていたスーツ男を渡す。
「ちょ、オッサン!!」
「黒部さん!まさか……」
2人は心配そうにスーツ男を覗き込む。
「血を流しすぎて気を失っているが、傷はそう深くない。すぐに傷を縫えば、命に別状はないはずだ」
半裸男がそう告げると、2人は露骨に安堵した表情になった。男の子はスーツ男を抱えると、足早に入り口の方へと向かう。
「……この子達を生かしておいてくださり、本当に感謝いたします。」
(*1)猛…たける
(*2)結乃…ゆの
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