第二章 その男、鯨飲につき

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どうせ酒ばかり飲むのだろうという予想を裏切って、意外にも半裸男はうどんとおかずを全て平らげてから酒を飲んでいた。 食べるスピードがとんでもなく早かったが、それ以上に飲むペースが尋常ではない。 グラスに注がずに、瓶から直接飲んでいる。 3分も経たないうちに、一升瓶が空になった。 「……もう、無いのか?」 「ありますよ」 ばあちゃんはにこやかに頷くと、私に倉庫から新しい酒を何本か持ってくるように指示した。 とりあえず、缶ビールとウイスキーを1本づつ、焼酎の瓶を3本籠に入れて持っていく。 とりあえずビールをグラスに注ぐと、半裸男はそれを一瞬で飲み干した。 「ぶくぶくするな」 (ぶっ、ぶくぶくって……) この人、炭酸を飲んだこと無いのだろうか? 危うく吹き出しそうになったが、かろうじて堪えながら2杯目を注ぐと、それも一瞬で無くなった。 ばあちゃんはそんな半裸男を、面白そうに観察している。 この家の住民は皆、酒に弱い。 しかし、ばあちゃんの弟が隣町で酒屋を営んでおり、店で売れ残って賞味期限が切れた商品や酒蔵からもらった酒が、この家の倉庫には数多く眠っている。 おそらく、ばあちゃんはこの男に飲ませて倉庫の中身を減らすつもりなんだろう。 酒が減るのは構わないが、酔って暴れたり、私たちに絡んだりしないのだろうか、それがかなり心配だ。 ただでさえ、アルコール中毒及び饅頭泥棒の嫌疑のある人間である。 しかし、そんな私の不安は完全に杞憂だった。
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