第二章 その男、鯨飲につき

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焼酎の大瓶を3本一気に飲み干しても、半裸男は顔色ひとつ変えない。 次々に、淡々と瓶を5本、10本と空にしていく。 初めはにこやかに見ていたばあちゃんも、大瓶が6本を越えてから心配そうに様子を伺っていた。 「シュテンさん、大丈夫かね?」 「ああ。もう無いのか?」 アルコール中毒を越えて、もはや人間離れしている。 「どうぞ」 栓を抜いてから瓶を渡すと、あっという間に飲み干してしまう。 ばあちゃんが台所から、鯖の味噌煮の缶詰めを持ってきた。 「良かったら、おつまみも……」 「ああ」 缶詰めを受け取ると、一口でぺろりと食べてしまう。 鯨飲馬食……そんな四時熟語が、ふと脳裏に浮かんだ。 「こんなに飲んで、本当に大丈夫なのかしら」 「さあ……」 大量の飲酒にも関わらず、半裸男は微塵も酔う様子を見せない。 30本目の焼酎(一升瓶)を飲み干しても、その勢いが衰えることはなかった。  瓶のウイスキー1本、缶ビール1本、日本酒を一升瓶で35本。 これだけの量を全て飲むのに、1時間もかかっていない。  (……この人、本当に人間なんだろうか?) 35本目の焼酎を空にすると、半裸男は机に瓶を置いた。 「馳走になったな」
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