第三章 着信

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何だかばあちゃんに家事を丸投げされた気がするが、そんなことを気にしていても始まらないので夕食の準備に取り掛かる。 が、その前に半裸男に確認をしておく。 「シュテンさん」 「なんだ」 半裸男はテレビから視線を外し、私の方に向けた。 こうして改めて見ると、この男が本当に整った顔をしていることが分かる。 頬に少し泥が付いていても、ほどよい高さですっと通った鼻筋や、涼しげだが黒目がちな切れ長の目元が綺麗だ。 (“イケメン”って言うより“美形”って言葉が似合う人だなあ……) もう少しまともな出会い方をしていれば、彼の美貌にクラッと来たかもしれない。 だが残念なことに、私にとっては半裸の饅頭泥棒というレッテルを貼られた残念なイケメンでしかない。 「夜ご飯だけど、何か食べられないモノとか、逆に食べたいモノあります?」 「特にない。何でも良い」 はじめは警戒していたが、真面目に畑仕事をこなす彼を見ると警戒心も少し薄れた。向こうも至って普通な態度で接してくるし、ばあちゃんとも上手くやっている。 「わかりました」 確認が終わったところで、いつもより早めに調理に取り掛かる。 変人とはいえ一応客がいるので、いつもの手抜き料理はよろしくない。 リビングのテレビからは、水戸〇門の主題歌が流れていた。
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