第三章 着信

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昨日から行方不明の生徒が6人、今日新たに確認された行方が分からない生徒が3人。 現時点で9名の生徒が行方不明になっているそうだ。 9名の名前と顔写真、特徴が画面に表示され、その中に幸野さんの写真も映っていた。 確かに2日間で高校生、しかも同じ学校に通う生徒が9人も行方不明になれば、何か事件が起こっていると見るのが妥当だ。 「物騒だねえ」 ばあちゃんは眉をしかめている。半裸男は無表情に画面を眺めていた。 「篝ちゃんも気をつけな。知らない人についていっちゃダメだよ」 「……うん」 知らない人を軽々しく家に上げ、怪しげな契約まで結んでしまう人間に言われても全く説得力が無い。 夕食の準備を再開するべく、台所に戻った。 蒸し器に水を沸かして、さつまいもを蒸かす。灰汁を取ったレンコンを、砂糖と醤油で甘辛く炒める。 メインの肉料理は、食事の少し前に作ればいい。とりあえず炊飯器のタイマーをオンにして、野菜のおかずだけ先に作っておこう。 何となく気分が乗り始め、包丁が軽快に滑りだす。 この時、私は油断しきっていた。行方不明の事件は自分には関係無いと、心のどこかでナメたことを考えていた。 ――――だが、そんな余裕は夕食の後、木っ端微塵に吹き飛ばされることになる。 私はこの時、料理やテレビに気を取られて気付いていなかった。 電源を切ったはずの携帯電話の、着信を示すランプが光っていたことに。
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