第四章 結界

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「ご飯できたよー」 リビングにいるばあちゃんと半裸男を呼び、3人分のご飯をそれぞれお茶碗によそい、箸と一緒に食卓に並べる。 「水炊きにしたの?」 ばあちゃんは油っこい食事が苦手なので、必然的に地味なおかずが多くなる。 半裸男の好みもいまいち分からなかったので、鶏の水炊きにした。これなら、味付けは各自の好みで食べられる。 「シュテンさん、とりあえずこれだけどうぞ」 焼酎を10本入りのケースに満杯に入れ、半裸男の足元に置いておく。 「足りなければ持ってくるので、遠慮せず言ってくださいね」 「ああ」 畑仕事をしていた割に、半裸男は疲れた様子をまるで見せない。 相変わらずの怪力で、瓶の王冠を素手で引き抜いた。 「じゃあ、いただきます」 私はポン酢、ばあちゃんは酢味噌、半裸男は何故か何もつけず水炊きをよそう。 半裸男の茶碗を見ると、食事が始まったばかりにも関わらず既に空っぽだ。 早っ、と口には出さずに心の中で突っ込むが、本当にものすごい早さで半裸男はおかずを一通りつまんでいる。 本当に好き嫌いが無いようで、食卓に出されたものは全てまんべんなく箸をつけてゆく。 「シュテンさんは本当によく飲んで食べるねえ」 水炊きから顔を上げると、箸を置いた。 「あれば、喰う。なければ、喰わない」 そうつぶやくと、手元の焼酎を一気に飲み干す。 「お兄さん面白い人だねえ。一体、何者なんだい?」 「?!」 ずっと気になっていたことを、ばあちゃんがかなり唐突にズバッと切り出した。
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