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「いただきまーす」
目の前に並んだ湯気を立てる朝ご飯に手を合わせ、箸を取る。
夏よりも品目の増えた食膳に秋の気配を感じつつも味わって……いる時間はあまり無い。
「ごちそうさま!」
やや急ぎ気味に食器を下げ、制服に腕を通すと鞄を持って家を飛び出した。
宮代篝(みやしろかがり)、17歳。
普通科の公立高校に通っている、ごく普通の女子高生だ。
皆と違う所といえば、町から更に離れた県境の山奥に祖母と2人で暮らしていることぐらい。
最寄りの駅までは車に乗っても40分はかかるし、自転車だとその2倍はかかる。というか、山を下りるのに30分かかる。
唯一の救いは、学校が山あいの町にあることだ。
下山すればすぐに到着する。
電車やバスを使わずに通学できるため、交通費が浮いて助かっている。
少し話がそれたが、山奥に祖母と2人きりで暮らしている以外は、どこにでもいる普通の女子高生だ。
山奥だからいつも圏外になってしまうけれど携帯だって持ってるし、帰り道には寄り道するし、適度に宿題をサボって友達のお世話になったるいする。
ありきたり、平均的、温厚という言葉がしっくりくる高校生だ。
特技や特殊能力も無いし、趣味は本を読んだり、料理や裁縫をさいたり、たまにばあちゃんとオセロをする事くらい。
まあ、平均よりはかなり地味な女子かもしれない。
でも、私はこの静な暮らしを、結構気に入っている。
ばあちゃんは面白いし、空気も食べ物も美味しい。
携帯が圏外になるのは不便だけど学校もそこそこ楽しいし、友達も良い奴ばかりだ。
――――そんな私が通う高校で、ある日突然事件が起きた。
その事件が人生を一変させてしまうことになるなんて、この時点で私は夢にも思っていななかったけれど。
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