第一章 はじまり

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「行ってきまーす」 いつものように7時ちょうどに自転車を漕いで、家を出る。 「行ってらっしゃーい」 畑に出ていたばあちゃんが、収穫したネギを片手に見送ってくれる。 晩ご飯に使うんだろうか。 門から出ると、家のすぐ裏にある祠に、今日の分のお供え物を供えに行く。 ばあちゃんが昨日お土産にもらってきた温泉饅頭を、年季とヒビが入った皿に載せる。 学校に行くときにお供え物を供え、帰りにそれを下げるのも私の役目だ。 しかし大抵はタヌキだか猿だかに食べられ、お供えの皿は空になっている。 山奥だから仕方ない。 何が祀られているのかは知らないが、神様も多目に見てくれるだろう。 行きは下り坂が多いので、ペダルを漕がなくても自然に前進してくれる。 20分ほど坂をくだると、私が通う高校が見えてくる。 田舎の高校らしい、程よくボロい……じゃなくて、レトロな校舎だ。
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