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「県立羅石ヶ丘(らせきがおか)高等学校」
私が通う高校の名前である。
地名をそのまま名前に持ってきただけの、安直なネーミングだ。
そんな我らが羅石ヶ丘高等学校の校門に、今朝は珍しく人集りができていた。
警察や新聞記者、それらに対応する教師、野次馬の生徒が集まっている。
何があったのだろう。
野次馬の中に、顔見知りの生徒が何人かいた。同じクラスの本庄麻子(あさこ)に声をかけてみる。
「おはよー。警察来てるけど、何かあったの?」
「はよ。私もさっき聞いたばかりだけど、ウチの生徒が行方不明らしいよ?」
「行方不明!?え、誰が?」
それは確かに大事だ。
「3年生だって。昨日から、6人も帰ってこないんだと。」
「ふーん」
その6人の名前を聞いたが、全然知らない人ばかりだった。
――集団家出とか?でも、大学受験を控えたこの時期に何故?
「……受験ノイローゼで、集団家出とか?」
「さあ?でも、6人ともクラスも部活もバラバラだし、特に接点は無い人たちらしいけど」
「へえ、そうなんだ」
こんなド田舎で6人の高校生が同じ時期に失踪したら、結構大きな事件になる。
そんな事をぼんやりと考えていたら、背後から肩を叩かれた。
「宮代、本庄」
振り向くと、担任の沢木先生が学級帳簿を持って立っている。
銀縁のメガネが、無駄に眩しい。
「あ、おはようございます」
「野次馬もいいけど、早くしないとホームルームに遅刻するぞ」
「げっ!」
時計を見ると既に針は8時を指してる。麻子と2人で教室まで駆け込むと、すかさず予鈴が鳴り響いた。
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