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第三章 着信
「シュテンさん」
皿洗いと宿題を終わらせ、洗濯物を取り込む前に、畑に寄る。
既に草むしりを終えられた畑に雑草は1本も無い。
ばあちゃんに指示されたのであろう、半裸男はしばらく使っていなかった畝を鍬で耕していた。
「なんだ」
「おやつの時間なので、休憩しましょう」
「そうか」
鍬を置くと、畝間を通ってこちらに来る。
「私は洗濯物を取り込んでから行くので、先にばあちゃんと食べていてください」
「ん」
返事は素っ気ないが、一応言ったことは聞いてくれるようだ。
これから行方不明事件が解決するまで、この男は我が家に用心棒として居候することになる。
なかなか個性的な人物だが、どうせ一緒に暮らすなら、お互いに気分良く生活したいものだ。
洗濯物を取り込み居間に向かうと、ばあちゃんと半裸男は件の温泉饅頭を頬張っていた。
「…………」
この男の饅頭泥棒の嫌疑はまだ晴れていないが、この際、水に流した方が良いのかもしれない。
「篝ちゃん、サラダせんべいも出してあげて」
半裸男の手元を見ると、饅頭の包みが何枚も散らばっていた。
私の分とおぼしき饅頭が2つほど、箱の角に残されている。
サラダせんべいを袋から出して、大きめの器に入れて出す。
「どうぞ」
半裸男はせんべいをしばらく眺めていたが、バクッとかぶり付くと一口で飲み込んだ。
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