第一楽章

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第一楽章

休日、人が少ない校舎の一角にあるトイレの一室、一人の男子生徒が閉じこもっていた。 彼は溜め息をつきながら一人、ぼそぼそとつぶやいている。 「どうして、こんなものを渡されたんだ。俺、この人になんかしたか?思い当たる節は無いはず。いや、あるかも、たくさんあるな」 右手でお腹をさすり、もう片方の手で淡いピンクの小さな便せんをもてあそぶ。 「ひょっとして、あれか?前々から俺に恨みでもあんのか?あってもおかしくないんだよな、これが。だったら教えてくれよ。しっかり爆弾処理したのによ!」 さらに深い溜め息を吐く。 「あー、腹痛い。俺、いったいどうなるよ?誰か、助けてくれよ。あっ、痛っ」 突然、彼の頭上からかわいらしい女の子物のスリッパが降ってきて、頭にクリーンヒットした。彼は憤りながら、そのスリッパを握り締めた。 「助けてくれとは言ったが、誰もこんなものをよこせとは言ってないぞ!このクソ後輩!」 「ノックしてもーしもーし、誰か入ってるんですかー?」 男子生徒のこもる個室の前に、ニコニコと笑っている少女が一人。 「ドアの鍵かかってんのわかるだろ!第一、ここは女人禁制。触れ得ざる聖域だぞ!」 「あっ、いたんですか。こりゃ、失敬。でも、こんなところを勝手に独占して聖域にしないでくださいー」
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