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振り向かなくてもすぐわかる。この尻尾にゾクリとくる声はあの女だ。案の定、見覚えのある小づくりの顔が横からのぞきこんできた。柔らかな髪、緑がかった大きな瞳、短い尻尾――――そのどれもが、女が異星人とのハーフであることを物語っている。確か母親は征服した星からこの星へ連れて来られた奴隷女の一人だという話だった。
今度の相手はあの男か、とバーダックは納得した。下級戦士の派遣先を決定する権限を持つ下士官だ。
男好きのする容貌と体。それこそがハーフゆえに戦闘力の低いあの女が、弱肉強食のサイヤ人社会で生き抜いてゆくための武器だった。
権力のある男をうまくたらし込み、骨抜きにして、危険な任務から自分を外させる。そうやって女は綱渡りのような人生を権力のある男をうまくたらし込み、骨抜きにして、危険な任務から自分を外させる。そうやって女は綱渡りのような人生を今日まで続けてきたのだ。
おそらく普通に戦士としての行き方を選んでいれば、少女のうちにあっけなく死んでいたに違いない。女であることだけを武器にした、ふてぶてしいまでにしたたかなその生き方が、バーダックにはむしろ小気味良かった。
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