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すかさず、間延びした顔のバーテンダーが、ぎくしゃくとした手つきで彼の前に合成酒の瓶とグラスを置く。
「たまには蒸留酒でも出ねえのか」
バーテンダーは黙ったままグルグルと左右別々に目玉を動かしてみせた。安酒に色気のない爬虫類系異星人が仕切る店。下級戦士相手じゃこんなものか。
「帰って来たのね、バーダック」
「早く切り上げて帰って来たって、褒美も出なけりゃ変わりばえのしねえ扱いだ。戦闘で飛び回ってる方がいいメシにありつけるぜ」
「今回はどうだった? 手こずった?」
隣のスツールに腰掛けると、女は媚を含んだ声で笑って言った。ほとんど顔をくっつけるようにして擦り寄ってくる。
「まあな。トーマのやつが熱病にかかった。傷敵の血を浴びて傷から入った毒素が全身に回ってな。まだメディカルマシーンでおネンネのはずだ」
「あらそう」
あっさりと女は受け流した。決まった相手のいる男の話など興味ないのだろう。
「あ、呼んでるわ。行かなきゃ」
女は素早く腰を上げ、「またね」と言うと、酒場の入り口に立ってこちらを見ている男の方へと、肉感的な腰を振りながら歩いていった。もっとも、何の権力も持たないバーダックと時々寝るのは、単に女の趣味らしいが。
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