~第1章~

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通称 “穴倉” と呼ばれる下級戦士専用の酒場は今夜も賑わっていた。 「よう、バーダック。早いご帰還だな」  足を踏み入れたとたん、横合いの薄暗がりから声をかけられた。顔見知りの男たちがテーブルを囲み、上機嫌で杯を重ねている。 「1週間の予定を4日で終わらせたってか」 「ここんとこ快進撃じゃねえか」 「武勇伝はあちこちで聞いてるぜえ」 「武勇伝? どっちのだ。こっちのか?」酒焼けした赤銅色(しゃくどういろ)の顔の戦士が、仲間に向かって卑猥な腰つきをしてみせ、回りの戦士たちがどっと受けた。 「へっ、好きに言ってろ」  バーダックは苦笑を浮かべてつぶやくと、そのままカウンターの一番奥のいつもの席につき、左耳からスカウターをはずしてカウンターに置いた。
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