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そこには貧相で顔色も悪く、どんな化粧を施そうとも恋に縁遠い女が、恨めしげに美由紀を見つめ返していた。
それが美由紀の真の姿だ。
座椅子の背もたれに掛かっていた生乾きのタオルを手にすると、覗き込む度に虚しくなるドレッサーの鏡に上半身を寄せて投げ付けた。
何をしても自分は駄目だと思い込んでいた美由紀は、タオルが上手く引っ掛かり、鏡が完全に美由紀を映さなくなったことで幾許かの希望をもった。
(そうよ……生まれ変わるんだから。今日から……)
再び決意を固めた美由紀は、新しく買い替えた携帯電話に向き直るとホットミルクのマグカップに手を伸ばした。
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