自殺とロマン

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小指がハンドルをさばきながら言う。 「俗物君」 「はい?」 「君につけたあだ名だよ。名前とは個体を示す記号。君にふさわしい記号を今、つけた。君は俗物君だ。ナス頭とどちらにするか、迷ったがね」 「…」 「記号とは君を正確に表すものだ。君がもし文字の世界に生まれていれば、間違いなく『俗物』の二文字であっただろう」 小指は冷静に淡々と語る。どこまで正気なのかよくわからない。 「そうですか、小指さん」 「なんだ?小指って」 「あなたのあだ名です。小指が曲がってますよね。記号化しました」 「馬鹿を言うな!まるで私のアイデンティティが小指しかないみたいじゃないか。脳細胞が腐ってるんじゃないのか?だから君は俗物君なのだ」 どうでもいい、お前は「小指」でいい。
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