自殺とロマン

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僕と小指は別室に移り、お菓子を食べながらくつろぐ。テレビには、監視カメラを通した少女の部屋の映像が映し出されている。少女にはまだ、目を覚ます気配はない。 「あの部屋は消臭も行き届いている。つまりリサは、嗅覚、触覚、聴覚、視覚を失った。食べ物をあたえなければ味覚も感じない。五感を遮断されたのだ」 「でも、これって小指さんの単なる少女監禁、犯罪じゃないんですか?どこが自殺なんですか」 「リサは自殺志望者なのだ。私に、最高の自殺をさせてくれと頼んだ。だから私はそれをしてやることにした。自分で死にたいと決断すれば、それは自殺だろう?それを実行する人間が私であったとしても、リサが死にたいと決めたのだから、これはリサの自殺だ」 「はあ。では、あれのどこが最高の自殺なんですか」 小指はにっこり笑って、答えた。 「あれは『死ななくてすむ自殺』なのだよ」
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