自殺とロマン

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「人格が完全に破壊されると、少女の自我は無に帰る。生まれる前にまで戻るのだ。そこで、解放する。少女は生まれ落ちた赤子のようになる。長く妄想世界にいて、突然解放された少女は…はじめて外界に触れた赤子と同じだ。外界の刺激に触れさせ、新しく育て直す。新しい人格が形成される。そして、新しい人生を始める。わかるかね、これは少女の『自殺』であり『復活』なんだよ。リサという人格は死ぬが、同じ体で生まれ変わるのだ。これがあの子の望んだ自殺。最高の自殺。復活の約束された自殺。死ななくてすむ自殺、だ」 小指は、少女の人格を破壊することで自殺させようというのか。とんでもない発想だ。 小指は、僕に向かって聞いた。 「さて、そろそろ…少女の新しい人格につける名前を考えなければな。リサという人格は死ぬのだから、同じ名前で呼びたくはない。俗物君、何かいい名前はあるかな?」
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