自殺とロマン

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「全身が吐き気を訴える…とても耐えられない気がします」 「耐えられないよ。だから人格が壊れるのさ」 「素晴らしい自殺と言う割には、苦しい自殺方法ですね」 「死ななくてすむのだから、それくらいの代償は当たり前じゃないか?何より人格が壊れるというのは、嫌なことも楽しいことも大切な記憶も壊れる、そしてこの世のすべてと決別することだ。苦痛を伴うのは仕方ない」 冷ややかに話す小指はまるで、世の中のすべてを知る賢者のようだ。しかしその心は暗く冷たい。僕は小指の口から紡がれる声に、何かむなしいものを感じた。 「あーああああああーぁぁぁ…ああ…ああああああぁぁぁぁ…お…ぉ………」 小指がテレビ画面を見て、嬉しそうに言う。 「もう叫ぶ気力がなくなってきたか。予想以上に早いな。これからどうなるか、楽しみだ。俗物君、買い物に行ってくれないか?私はここを離れるわけにいかないからね」
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