自殺とロマン

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僕はコンビニへ行き、大量の食料や水を買い込んできた。その中のスパゲッティを食べ、眠くなったので寝た。起きた時、小指はテレビ画面を見つめていた。僕が眠る前と同じ格好で。一晩中そうしていたのだろう、目は赤く血走っている。 「おはよう小指さん」 「ああ、俗物君。少女の目を見たまえ」 ブラウン管に映る少女の瞳は、光を失っている。焦点が合っていない目だ。そのくせ、不規則に上を見たり、下を見たり、細かな運動を繰り返している。気持ち悪い。表情のない人形の、目玉だけがくりくりと動いているようだ。 「幻覚を見ている」 小指の顔は、生き生きとしている。 「少女は今、世界から切り離されつつある。他人に煩わされることのない、自分だけの世界にいる。自分の脳が作った感覚の世界だ。仮想現実だ。しかし、少女にとってそれが現実なのだ。ああ、何というロマンなのだ」
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