自殺とロマン

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「なあ俗物君。これはゲームなどの仮想現実とは違う。ゲームはある程度、他人の想像力などの力を借りている。しかし今少女は、完全に自分の妄想の世界にいる。何でも自分の好きなようにできる世界だ。どんな世界なのだろう。私はそれを見たくて仕方ない。王様のように贅沢三昧の世界なのか?はたまた、花園のような理想郷だろうか?もしかしたら、慎ましやかな家庭の姿か。意外と人間は、何でもできるとなるとつまらないものを望むからな。いや、地獄のような弱肉強食の世界かもしれない。ああ、人は、壊れる時にどんな幻覚を見るのだろう!」 僕は少女の瞳を見つめた。美しい顔にはめこまれた宝石はしかし、幻覚しか追うものがない。 部屋の隅に置かれた少女のセーラー服と鞄。 少女が使っていただろう、学生らしい可愛らしい鞄は。今や持ち主とあまりにかけ離れた存在に思えた。
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