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灰色の少年。
彼は黒髪に白いワイシャツ、黒いズボン。学校の制服そのままであろう出で立ちに加え、身長低く華奢な体躯。一見女性にも見える。
いや、男性に見えないと言ったほうが正しい。彼には女性的な要素も皆無だったから。中性的で、現世から隔離したような雰囲気。すべてを諦めたような瞳。
彼に魅力があるとすれば、すべてを飲み込む虚無の気配。暗い欲望を持つ者ほど彼に目を奪われる。幸せな世界に生きる者の眼に、彼は映らないだろう。
限り無く無価値で、無意味で、存在意義なんかない。そんな空気が、灰色になって彼を包んでいた。
彼は灰色の少年。
名を「さく」と言う。
しかし名前はさくにとって何の意味もなく、名前にとっても、さくは無価値な人間だった。
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