なぜ小指は曲がるのか

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「さく」 少年の後ろから声、そして手がのびた。手は少年の肩をぽん、と叩こうとした。 が、見事に空振り。手を伸ばした少女はバランスを崩し、倒れた。 「…何してるの、愚民さん」 「転んだだけ。あと私の名前はアミだから。いい加減名前で呼んでよね」 少女は笑いながら立ち上がる。さくとアミは、いわゆるカップルだった。青年期にありがちな、何となくの恋仲。 もちろん少女は少年を愛していたし、少年は世界のすべてを愛していなかった。
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