自殺とロマン

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一年前、ビルの屋上であいつと出会った。 風が僕の横を吹く。 眼下の世界を見下ろしながら、僕の心は安らかだった。もうすぐこの世界からオサラバできると思うと、何とも爽やかな気分だ。 ふと気付く。屋上に男が現れた。僕を見ると静かに挨拶した。 「こんにちは。君の自殺は、誰に対しての自己主張かな?」 妙な質問だな。僕は答える。 「別に。この社会が嫌いなんだ」 「…ふうん。オリジナリティに欠けるね。つまらん」 男は手にしたサンドイッチの袋を開け、食べ始めた。 僕は聞いた。 「止めないのか?」 僕の体は高層ビルの屋上、フェンスを超えて外側だ。要するにあと一歩踏み出せば。落下、粉砕、死亡、である。 サンドイッチを食べる男は、その僕の状況に対しあまりに無関心だ。 「止めてほしいのか?」 男の言葉は、僕の心に刺さった。はたして、自殺を止めてほしいのだろうか僕は。 「…わからない」 「あっそ」 その男はつまらなそうに、言った。
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