なぜ小指は曲がるのか

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でも、そんな自分が嫌で。家族や友達も好き。仲直りしたい。酒もドラッグもセックスもむなしいだけ。逃避。逃避だとわかっていてやめられない自分。自己嫌悪。弱い自分。病気。 視界は容赦なく狭まる。朝起きるたびに、世界が狭くなる。太陽が小さくなる。昔見た朝日は、もっと輝いていて、明るくて、未来の希望を象徴するかのようにきらめいていた。今、私の目にうつる細い太陽は、暗くて不気味で無機質な光を発散している。怖い。何度も泣いた。 何を恨むわけにもいかず、死ぬこともできず、生きる希望もない。 頭から足までがんじがらめ、私はまるで鎖に繋がれた囚人のよう。牢獄からは花畑が見える、あそこに行きたい。 牢屋の鍵、光に満ちた世界へつながるドアの鍵を、探していた。 さく。私を外へ連れ出して。光に満ちた世界へ連れてって。 そして光の中で、殺して。もう、牢屋に戻らなくてすむように。 殺して。 …アミの話が終わった時、さくは静かに頷いた。
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