なぜ小指は曲がるのか

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――― 「小指さん」 僕は新聞紙を掲げて問い掛ける。小指は窓際から、だるそうに答えた。 「なんだね俗物君…私は今いい気持ちで木を見つめていたのだが」 「新聞にまた未成年の凶悪犯罪が載ってますよ。いじめで殺人…イタっ」 妙な布が僕に当たった。小指がタオルを丸めて投げ付けたのだ。 「だから君は俗物君なのだ。そんな事件の何が珍しいのだ。面白くもなんともない」 「しかし」 「君は世界の本質に気付いていない。あの木を見たまえ」 小指は、公園に立つ巨大な樹木を指し示した。 樹木は枯れつつある。いくつかの枝が折れ、地面に散乱していた。公園の子供達は枝を拾い、チャンバラごっこをして遊んでいる。 「のどかな光景ですね…」 僕が答えると、小指は不気味に笑った。
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