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「愛はつまり、人間という『種』が長く続くための、一つの方法にすぎない。
愛という本能で団結することで、人類は続いてきた。これは別に素晴らしいことでもなんでもない。種を続けるために牙を強化した生物もいれば、毒をその身にやどした生物もいる。人間の場合、頭の中に愛というプログラムを組み込んで対応したというだけだ。
僕たちが崇める愛という幻想は、単に遺伝子を残すための、最適なプログラムにすぎない」
ドクン
「そして人類は愛を否定できない。毎年馬鹿みたいに恋愛ソングが作られ、変わりばえもせぬ恋愛ドラマや恋愛小説が、蛆虫のように湧き続ける。それを見て泣く。泣かざるをえない。皆が皆、恋愛に感動する、その異様さに誰も気付くことはない。時に恋愛を否定するものは、「変人」の烙印を押される。簡単だ。虎は己の牙を否定したら、滅ぶしかない。人間も、愛を否定せず、崇めるように作られているのさ。そこまで考えて作られたプログラムなんだ、愛は」
ドクン
「僕たちは愛の奴隷だ。人類という種を続かせるため、愛を崇めるように作られ、愛の至高性を疑うこともなく死んでゆく。
僕たちは遺伝子の奴隷だ。僕たちに自我なんてものはない。遺伝子を交配させ、長く人類という種を続かせるために、価値観や感情というプログラムを最初から組み込まれた…ロボットにすぎない」
ドクン
「僕のこの理論…。実は、現在の生物学で否定する方法はない。僕が知る限り。いや、むしろ…生物について調べれば調べる程、この理論に近付いてゆく。すべての事象が僕の理論を完璧に近付けてゆく」
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