撥ねられちゃった

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 ボーッと眺めてみる。  ああ、やっぱり可愛いなあ。家に近い高校で何の新鮮味もないと思っていたけど、彼女がいるならば毎日が輝くね。  まあ彼女は毎日学校に来るわけじゃないんだけど、同じ学校に通ってるっていうだけで、僕はハッピーだ。  僕こと大沼健一(オオヌマケンイチ)は、学校のアイドルであり、日本の国民的アイドルでもあるリリちゃん、桐野瑠璃(キリノルリ)ちゃんに見とれています。  でも僕だけじゃないさ。  周りの男子生徒は全員、彼女の揺れる艶やかな茶髪を見ただけで虜になる。    もちろん男性教師も釘付けだ。  ちなみにリリちゃんは今、国語の時間で小説の音読をしてくれてます。  彼女の生声、しかも音読なんてレアなものを聞けるのはクラスメイトの特権だよ。 「よし桐野、ご苦労様。次は大沼だ。読め」  扱いが月とスッポンだね。まあ自分でもしょうがないと思うけどさ。  小さく返事をして立つと、将来何の役に立つのかわからない文字の軍勢を読みます。勿論、噛み噛みでね。
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