撥ねられちゃった

8/10
前へ
/162ページ
次へ
「むう、しょうがないです」  また口の中に何かが流れ込んできた。でも今度はさっきと違う。徐々に口の中に流れ込む液体のようなものは、これまたさっきと違って生温い。  二回目ということもあってか、僕はそれを何とか飲むことができた。  何にも変化はないけれど。 「よし、じゃあ帰るです」  な!? ちょっと待ってよ。ああ、声でないんだっけ。  混乱しているうちに足音が遠ざかっていく。ああ、違う。周りの音まで全部小さくなってきたんだ。  死ぬんだ。  さすがに頭ももう働かない。  五感のすべてが奪われ僕の意識も闇の中へと落ちていった。  目覚めたら知らない天井でした。  蛍光灯のの光りが妙に明るく感じられて、もう一度目を閉じた。あー、眩しい。目なんか擦ってみる。  すると隣で何かが倒れるような音が聞こえた。 「・・・・・・生きてる?」 「き、奇跡よ!」 「兄貴!」  隣では父さんが呆然と立ち尽くし、母さんが顔を押さえて泣き崩れ、あの生意気な妹は僕に抱き着いている。
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

933人が本棚に入れています
本棚に追加