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「サボってると店長に言いつけるぞ」
ちゃかすように言いながら、俺の横を通り過ぎようとした時、手が触れた。
―熱い…!
思わずサクの手を掴んで、強引に歩みを止めさせる。
当然、驚いていたが構わない。
「お前…」
「変温動物なの」
「…は?」
俺の言葉を遮り、また意味不明な事を口にする。
困惑する俺を見て、笑いながら続けた。
「今日は暑いから体温も高いんだよね。冬は常に冷たいし。逆なら良かったのに」
ヘビか、お前は。
平然と言うサクを見て、また何故か苛ついて言ってはいけない事を言ってしまった。
「なんか…お前を見てるとイラ
イラする」
原因不明の八つ当たり。
言ってから後悔するのが人間だ。
きょとんとしていたサクの顔が、満面の笑みに変わる。
愛嬌があって可愛いと思う。
瞬間、鋭い目つきに変わり言い放つ。
「じゃ、見るな」
…ごもっとも…。
踵を返して去っていくサクの背中を見つめながら、俺は動けずにいた。
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