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「珍しいわね、あなた達がケンカするなんて」
「ケンカっていうか…俺が一方的に怒らしてしまって…」
姐さんは俺の相談にのってくれる唯一の人だ。
ほとんど面白がって話を聞いているだけなのだが、それでもありがたい。
気持ちを吐き出すだけで少し楽になる。
「バカねぇ。何でそんな事言っちゃったのよ?私でも怒るわよ」
「…ですよねぇ」
俺でも怒ると思う。
自分でも分からない。
気がついたら言葉にしていた。
「熱があるかもしれない人間が、あんな笑顔であんなに動ける?私なら無理ね」
遠くでてきぱきと働いているサクを見守りながら、姐さんはきっぱりと断言した。
それでも納得できずにいる俺の顔を眺めながら、また断言する。
「あのね、あの子は『ああいう』子なの」
…なるほど。
妙な説得力。
根拠はないけど。
「ご覧なさい、アレを」
姐さんが指差す方を見ると、白い液体を飲んで満足しているサクがいた。
白い液体の正体、牛乳だ。
よく見ると何かが入っている。
「氷よ」
俺の心の中を読んだかのようなタイミング。
「あの子はね、牛乳に氷を入れないと飲めないの。しかも必ずお腹が痛くなる事を承知で飲むのよ。何故だか分かる?」
その迫力に押され、ゴクリと息を呑む。
「な、何故ですか?」
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