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「そこに牛乳と氷があるからよ」
『広瀬朔評論家』の姐さんは更に言葉を続けた。
「いい事?私達の常識であの子を図ってはダメよ。あの子は未知なる新生物なの」
とても失礼ではあるが、納得せざるを得ない。
俺が日々感じていた不思議は、他の人もやはり感じているらしかった。
小芝居を終え姐さんは満足したらしく、普通の喋り方に戻り、もう一言つけ足した。
「まぁ、眠たいのは当然だと思うわよ。あの子、パン屋さんでも早朝のバイトしているんですもの」
―え…?
今、何と…?
「悩め、少年よ、青い春を満喫しなさい」
現実を整理しきれずにいる俺を置き去り、姐さんは不敵に笑いながら行ってしまった。
俺は思う、姐さんも充分『謎の人』だ。
謎といえば、一つ謎が解けた。
サクから漂っていたパンの匂い。
アレはサクがパン好きで食べていたわけではなく、パン屋のバイト中に体についた匂いだったのだ。
二つ、バイトを掛け持ちしていた。
相当眠気も疲れも溜まっている筈だ。
それなのに少しもそんな素振りを見せない。
俺は全く気づかなかった。
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