5人が本棚に入れています
本棚に追加
自分の無力を知った。
すごく、悔しかった。
サクはいつから他人に頼る事なく自分の力で生きてきたのだろう。
他人に甘えず、自分にも甘えず。
『コレで生活してるんだから』と言ったサク。
更に掛け持ちしていた事を思い出す。
生活の全ての費用を一人で賄っている者の発言。
当然ながら親からの仕送りで生活している自分。
否、当たり前と思ってはいけない。
とてもありがたい事だったのだ。
今更ながら思い知る、親のありがたみ。
俺は何も分かっていなかった。
店長にはサクの不調は教えなかった。
軽軽しく言ってはいけない気がしたのだ。
『居場所を取るな』と寂しそうに呟いたサク。
きっと、金銭面とは別の理由があって休みたくないのではないか。
そんな気がして誰にも何も言えずにいた。
この日もまた、俺は少し居残り作業をしていたのでサクとは帰れなかった。
結局、誰もサクの不調に気づく事なく店は閉店した。
その事実がまた、俺を寂しくさせた。
.
最初のコメントを投稿しよう!