―Smile―

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「ユキって本当…バカだよなぁ…」 静かに、笑いながら。 でも、声が震えている。 ―――泣いてる? 否、必死に涙を堪えている。 「どっちがだよ?」 俺は苦笑しながら、サクの頭を軽く小突いた。 そして、そのまま頭を撫でてやる。 「我慢しなくていいんだ。頼りないかもしれないけど、俺で良ければいつでも傍に居るからさ」 まるで愛の告白みたいだと、他人事のように思った。 「知らないぞ?涙の止め方知らないんだからな」 表情は見えないけれど、多分イタズラっぽく笑っているのだろう。 声を震わして、涙を堪えて、それでも必死に強がるサが………何故か愛しかった。 「好きなだけ泣けよ」 遂に、堪えきれずにサクは涙を流して泣いた。 今まで我慢していた感情が一気に溢れ出したようだった。 嗚咽を噛み殺して泣くサク。 泣き方を知らない子供のように。 一人で居る時でさえ、泣く事はしなかったのだろう。 痛みを耐えて誰にも見せず、自分にさえも嘘をつき、笑顔で自分を守ってきたのだ。 瞳から一滴の涙がこぼれた。 無理して笑う事の辛さが、少しだけだが俺も知っている。 もしかしたらあの雨の日、サクは泣いていたのだろうか。 『気持ちいい』と言ったサク。 雨を自分の涙に例えて…。 一日中降り続いたあの日の雨は、サクの心の涙だったのかもしれない。 抱きしめようかと思ったが、それは何か違う気がしたので、撫でた手をサクの頭の上に置いたままにした。 そして、時々また撫でてやった。 一人じゃない、誰かが傍に居る温もりと安心感。 それを伝えたかった。 .
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