―Smile―

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*************** 広瀬 朔(ヒロセ サク)は、とにかく変な女だった。 間違い電話の相手と普通に話したり、屋根の上に布団を敷いて寝て落ちかけたり、飄々としていて掴み所のない、雲みたいな女だった。 サクと出会ったのはバイト先。 大学進学と共に一人暮らしを始めた俺は、ようやく新しい環境にも慣れ、小遣い稼ぎにとバイトを探した。 アパートの近くの喫茶店、そこが俺のバイト先。 たまに残り物で夕食をご馳走してくれる、とてもありがたい場所だ。 同い年のサクはフリーターとしてそこで働いていた。 身長は女子にしては高く、男子にしては低い。 髪は女子にしては短く、男子にしては長い。 そんな微妙な外見で、大きな瞳が印象的だった。 ちなみに髪の毛先の長さがバラバラなのは自分で切ったからで、所々ハネているのは寝癖が直らなかったせいだ。 この事からでも分かるように、サクはとても大雑把な性格だった。 逆に、誰か困っているとさりげなくフォローしたり、不足した備品をいつの間にか補充していたり、細やかな性格でもあった。 .
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