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その日の帰り道、俺はいつものようにサクと歩いていた。
家が同じ方向で、二人共車がないので自然と一緒に帰るようになった。
「テストか~、懐かしいな。勉強した記憶はないけど」
「マジで?成績は?」
俺の驚きに対してサクは得意げな顔で答えた。
「中の上」
「すげ~…」
「ユキと違って要領がいいからね」
笑いながら言うサクに、俺は納得するしかなかった。
たしかにサクは要領がいい。
同じ作業をしても、サクの方が断然早く綺麗に終わる。
「あ、俺が休みになったって事は…もしかして…」
突然の疑問にサクはあっさりと答えた。
「私の休みがなくなった」
やっぱり…。
「…ごめん…」
サクはただでさえ休みが少ない。
俺がバイトの日は必ずいる。
貴重な休日を奪ってしまい、本当に申し訳ない…。
けれど、それでもサクは笑いながら俺の気持ちを吹き飛ばした。
「気にするなって。コレで生活してるんだから、むしろありがたいし。休みだって何も予定ないから暇だしね」
この言葉に少し安心する。
サクはよく笑う奴だった。
いつも笑顔で皆に好かれていた。
イラついた時や落ち込んだ時、バイトに来れば元気になれた。
「じゃあ、しっかり勉強しろよ、苦学生」
「おう、お前もしっかり働け、フリーター」
いつもの別れ道、アパートはすぐそこだ。
互いに健闘を祈り(?)自分の帰路に着く。
俺は少しの間だけサクの後ろ姿を見送る。
一応、女だ。
夜九時過ぎに一人歩きは物騒だろう、周囲に不審者がいないか確認して帰るのが日課になっていた。
今日も大丈夫、自分の家路に着こうと思ったその時、ちょっとした違和感を感じた。
―今、サクがふらついた…?
俺の気のせいか。
まぁ、何もない所でもつまずくような天然な奴だし。
自己解決し、ようやく俺の足は家へと向かって歩き出した。
テスト休みまであと三日。
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