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広瀬朔は、味覚も不思議な女だった。
甘いものは苦手なクセに生クリームをそのまま食べるし、激辛ラーメンはダメだけどフランクフルトには辛子をたっぷりつける、我が儘で気まぐれで、猫みたいな女だった。
その日は朝から雨が降っていて、気分を憂鬱にさせていた。
テストが近いからっていう理由もあるのだけれど…。
否、気分が優れないからといって全てを雨のせいにしてはいけない。
一年の中で何日雨の日があると思っている。
いちいち気落ちしてはいられない。
恵みの雨だ。
―と、無理矢理前向きな思考を凝らしてはみるのだが、徒労に終わる。
原因は解っていた。
――サクがいない。
ただ、それだけ。
俺がしばらく休む間、サクが連勤になるので、店長の計らいで休みになったのだ。
サクの体調の事を思うと良い事なのだが…。
「居る筈の奴が居ないと…変なカンジだよなぁ…」
思わず口に出た本音という名の独り言。
そう、変なのだ。
調子が狂うというか、物足りないというか…とにかく『変』なのだ。
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