―Smile―

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*************** 広瀬朔は、味覚も不思議な女だった。 甘いものは苦手なクセに生クリームをそのまま食べるし、激辛ラーメンはダメだけどフランクフルトには辛子をたっぷりつける、我が儘で気まぐれで、猫みたいな女だった。 その日は朝から雨が降っていて、気分を憂鬱にさせていた。 テストが近いからっていう理由もあるのだけれど…。 否、気分が優れないからといって全てを雨のせいにしてはいけない。 一年の中で何日雨の日があると思っている。 いちいち気落ちしてはいられない。 恵みの雨だ。 ―と、無理矢理前向きな思考を凝らしてはみるのだが、徒労に終わる。 原因は解っていた。 ――サクがいない。 ただ、それだけ。 俺がしばらく休む間、サクが連勤になるので、店長の計らいで休みになったのだ。 サクの体調の事を思うと良い事なのだが…。 「居る筈の奴が居ないと…変なカンジだよなぁ…」 思わず口に出た本音という名の独り言。 そう、変なのだ。 調子が狂うというか、物足りないというか…とにかく『変』なのだ。 .
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