―Smile―

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「…何かあったのか?」 問いかけながら隣のブランコに座る。 サクに差し出した傘は、受け取る気がないらしいのでたたんでしまった。 俺もサクも、これだけ濡れてしまっているので今更変わりはしないだろう。 「何も」 俺の心配を余所に平然と答えるサク。 「ただ本当に気持ちいいだけ。濡れるの気にしないのって子供の頃以来だから、久しぶりでさ」 いつもと変わらず笑うサク。 ―――でも『何か』が違う。 「ユキこそ風邪ひくから帰りなよ」 逆に心配されてしまった。 「大丈夫、バカだから」 豪語する事ではないのだが…。 ここまできたら意地でも帰らない! てっきり笑うだろうと思っていたのだが、返ってきた言葉は予想外のものだった。 「バカは風邪ひかないんじゃなくて、体調管理のできない馬鹿が風邪ひくんだよ」 …なるほど。 納得してしまって、ようやく気づく。 「つまり、ソレってやっぱり俺はバカって事?」 言いながら横を見ると、サクがイタズラっぽく笑っていた。 その顔を見て少しホッとした。 いつものサクだ。 「さて、帰りますか。本当に風邪ひかれても困るしさ」 にぃっと笑いながら立ち上がったサクに続いて体を起こす。 もう髪から水滴が滴っている。 サクはそれを犬のように頭を振って飛ばしてきた。 俺もやり返したり、じゃれつきながら家路についた。 あんなに浮かなかった筈の気持ちが、天気とは逆に晴れてきているのが分かる。 これなら雨の日も悪くない。 テスト休みまであと二日。 .
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