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広瀬朔は、常識も人とは違う女だった。
朝がきても暗いと起きられない理由でカーテンがなかったり、送ってあげると言われて知らない人の車に乗ったり、全てを吹き飛ばす自由奔放な、風みたいな女だった。
雨の後の天気は気持ちがいい位清清しい。
無事(?)風邪をひかなかった俺は、今日も元気にバイトに励んでいた。
因みに、サクも風邪をひく事なく出勤している。
いつものように笑顔で、いつものように仕事をしている。
いつもと違ったのは、俺の心だった。
理由は分からないが、イライラする。
普段ならサクの笑顔を見たり、話していれば落ち着いているのに…今日は何故か逆なのだ。
風邪にそんな症状はないので、その所為にはできない。
他人にあたる程子供でもない。
無理やり笑顔で接する自分がいる。
そんな自分も嫌で、お腹の調子が悪いからと言ってはトイレに篭り、心を落ち着かせていた。
店内に戻ろうとふと休憩室に目をやると、サクが掃除をしているのが映った。
知らなかった。
いつもキレイだとは思っていたけれど、サクが掃除していたとは。
新事実を発見し、少しの間様子を眺めていると、テーブルを拭いていたサクの動きが止まった。
後ろ姿で定かではないが、頭を抱えている…?
左手で体を支えるようにテーブルに体重をかけながら。
もしかして、頭痛?
「サク?」
思わず声をかけた。
が、振り返ったサクは目をこすっていただけだった。
「何?」
眠たそうなサクの顔。
心配して損した気分だ。
「いや、何でもない…」
サクが相手だと、やはり調子が狂う。
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