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「どーでもいいわけないだろ? 教えろよ! どこに惹かれたわけ?」
平静を装いながらも、心の内では頭を抱え、ぐるぐるとした靄の中で溺れている俺を、さらに沈めるかのように、拓海の追い討ちが、何度何度も迫ってくる。
「恋とかそう言うのって、するんじゃなくて、落ちるもんだろ? んなもん、気がついたら深くにいて、這い出せなくなってるもんなんだよ。だから、どこが好きになったとかそーゆーの、ほんとに関係ないだろ」
一応、最もらしい答えを口にし、さっと俺は立ち上がる。
「どこいくの」
「トイレ」
逃げるように足を進める俺の背中に、
拓海の声が飛ぶ。
「どこが好きとか、すごく大事だろ」
重くのしかかる、拓海の言葉。
俺は足を止めなかった。
俺が見つけた、あの子の良いとこは、誰にも教えてやるものか。
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