こんな街

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「学校の伝統だ。いずれは消えるやもしれんな」 なんだかんだ言いながら、神流も早朝登校は嫌いらしい。朝が苦手なのだそうだ。 「それより貴様ら、体育祭の種目選択に名前が記入されていないようだが」 「あれ、もうそんな時期?」 うちの学校は春の体育祭だから5月にある。俺達2年は1年間、行事で埋まっている。 「何が余ってんだ?」 「運良く騎馬戦しか空いておらぬな」 「運良く?」 「もめる必要が無いであろう?馬で良いか?良いな」 「騎馬戦とは4人でするのでござろう?上は誰が」 「決まっておろう」 神流は提出用の紙に俺達の名前を書き込みながら不敵に笑った。 「あのような荒事、荒井傀にしか務まらぬわ」 学校一の不良の名前は、すでに書かれていた。 「いってぇ…あいつ本気で雷落としてきやがった」 「本気だったらお前死んでんじゃね?」 「妖専用の雷だから人に落としても痛みしかねぇんだと」 昼休みにやっと登校してきた傀は、教室に入るや否や、神流の雷を喰らったのであった。 「で、話ってのは」 「あー…体育祭なんだがよ」 「5月だっけか?ご苦労なこった」 「お前が騎馬戦に出ることになった」 傀の眉間に皺が出来た。 「……あん?」 「なんか騎馬戦のメンバー足りなかったみてぇでよ。俺と久親と鶻が馬で、お前が上」 「…誰が決めた」 空気が痛いと思ったのはいつ以来だろうか。 「いや、言うな。わかってる。…守神の野郎…どうせあいつは障害物リレーの籠に乗るだけだろうが」 ご名答。 「お前、去年はどうしたんだ?」 「1000メートルリレーだったが補欠に任せてサボった」 なるほど。 「騎馬戦にゃ補欠いねぇしな…チッ、しゃあねぇ。今年は出るか」 「え、いいのか」 「いいもなにも、決まっちまってんだろ?守神には今度落とし前つけとく。流石に棄権するわけにゃいかねぇだろ」 こういうところで周りを思いやるところが荒井傀である。私利私欲だけでは動かない。 「それじゃ、次の授業遅れんなよ」 「起きてたらな」 傀はそう言って、ご丁寧にアイマスクまで付けて昼寝を始めやがった。雷を落としている神流が今から目に浮かぶ。  教室に帰ると、待ってましたとばかりに黒板消しが降ってきた。勿論、大量のチョークの粉が付いている。なんとか避けるが、避けた先にあった扉で後頭部を打った。かなり痛い。 「「おぉ~…」」 久親と鶻がこっちを見ている。どこでこんなことを覚えたんだ。
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