こんな街

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今宵は酒の肴にするのも良かろう」 「酒と油揚げってあうのか?」 とてもそうは思えない。 「油揚げにあわぬものはあるまいよ。少々不味い酒も美酒に変わるというもの」 この油揚げ馬鹿が。 「油揚げが故に馬鹿と成るのであれば、それもまた本望」 「何、エスパー?」 「お主の言いたい事など、手に取るように解る」 「稲荷、嘘言わないの。雅、声に出てたよ」 まさかだろ。 「ときに鶻」 「ん?」 「『足が6本』と聞こえたのだが、人の子はいつそのような進化を成し遂げたのだ?」 想像してみて下さい。 「あー、違う違う。そんな人見たこと無いし見たくもないよ。騎馬戦の話」 「『騎馬戦』…それは久親の専売特許ではないのか?いつの間に馬の足を6本にする技術を人の子は」 想像してみて下さい。 「稲荷殿、私は騎馬隊ではありませぬ故、専売特許ではござりませぬ」 「ほぉ、そうなのか」 「はい、私は水軍で」 「久親、話が逸れてるよ」 さすが鶻。筋道を見失わない。 「おぉ、そうでござった。稲荷殿、騎馬戦とは、3人で騎馬を作り、1人がそれに乗り、敵方の鉢巻きを取る、または敵方の体勢を崩せば勝つという、体育祭の競技のひとつにございまする」 どうして久親は稲荷に対する態度がこうも変わるのだろう。 「体育祭…それは一度参加してみたいものだな」 「うちは一般参加競技無いしねぇ…参加は無理じゃない?」 「っつーか稲荷、運動嫌いだろ」 「運動も、祭となれば話が別。しかし参加出来ぬのであれば、高見の見物と洒落込むこととしよう。それなら良いであろう?のぅ、久親よ」 「無論にございまする!」 稲荷が見に来る。理由はよくわからないが、嫌な予感しかしなかった。 「おいコラ変態ピエロ」 「それはどちらのことを言っているんですか?」 「俺は変態の自覚は無いなぁ。お前じゃね?」 「私はピエロじゃないですよ」 「変態とピエロ」 「「はい」」 逆に清々しく返事されても困る。ロバーテはそのままピエロだが、ヴェローネは抗議のひとつくらいしたらいいものを。 「また久親と鶻に変なこと教えたろ」 「…どれのことですか?」 「多すぎてわかんねぇな」 このヤロウ。 「黒板消し」 「あー、あれはやらなきゃ学生になった意味ないですからね」 「リアクションもしやすいしなぁ」 確かに定番ではあるが。 「いい加減あの2人で遊ぶのはやめろ」 「違いますよ」 「俺達が遊んでるのはお前だよ」 「尚更やめろ!」
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