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この2人は本当に調子が狂う。
「そういえば、稲荷君が体育祭を見物に行くらしいじゃないですか」
「へぇ、そうなのかぁ?」
情報収集が早い。いつ聞いたんだ。
「ま、私はそういうのに興味はありませんから、留守番させてもらいますよ」
「見てるだけは面白くないならなぁ。俺も参加出来るならまだしも、高見の見物は好きじゃないんでねぇ。俺も留守番しとくかな」
意外にもそんなことを言う2人は、足早に部屋へ戻ったらしい。何かを企んでいる風ではなかったが、嫌な予感がする。何か大きなことを忘れている気がする。
部屋に戻ると郵便物が届いていた。というか、扉の前に置かれていた。「判子はいらないよ」という置き手紙と共に。本当にあの配達人はアバウト過ぎる。
「…華夜叉から?何だ」
盗賊、華夜叉。たまにフラリと帰って来てはスッといなくなる変な女である。
縦横奥行40センチ前後の「生物です」と書かれた箱を中へ運び、ガムテープを剥がす。微かに甘い匂いがする。和菓子だろうか。そういえば、華夜叉は和菓子が好きだったような。華夜叉が選ぶ菓子はどれも絶品だ。期待しながら中身を取り出す。綺麗にラッピングされた包みが出てきた。随分と焦らすものだ。包みを丁寧に剥がしていくと、少し匂いが濃くなった。食欲をそそる匂いだ。最後は一気に袋を外す。すると
「ミギナー」
猫。
一瞬思考停止。箱を改めて見る。
「生物です」
「……『せいぶつ』かよぉぉおお!!」
俺の絶叫は1階上の久親や鶻にまで聞こえたらしい。嬉々として降りてきやがった。
「おぉ、なんとも愛らしい。唐渡りの動物でござるか?」
「猫だね。人によくなついてるじゃん」
誰がガムテープまで貼られたダンボールに仔猫が入ってるなんて思うものか。ご丁寧に籠まで用意しやがって。
「ミギナー」
「ハハッ、変な鳴き声」
「…この猫殿は、何故和菓子を食しておるのでござろうか」
どうやら甘い匂いは「餌として」入れられた和菓子のようだった。普通より少し匂いが濃いものだ。よくこんなものを餌に選んだな。
「ミギナー」
「うちのアパートは犬猫ネッシーオッケーだけどさ。お金かかるんじゃない?」
動物許可がされている表示が「犬猫ネッシー大歓迎」なのだから、このアパートもどうかしている。
「いや、他の猫用品は後日送るって紙が入ってた。何でもよく食うからキャットフードじゃなくても、
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