こんな街

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「ミギナー?」 猫じゃらしをくわえたまま、猫がベッドの下から顔を出す。首を傾げているのが可愛すぎる。 「飼い主見つかったって。よかったね」 上から覗き込んで言う鶻を、猫が名一杯首を持ち上げて見る。よくわかっていないようだ。 「傀はいつ頃参るのでごさ――」 ドコォン!! そんな音が入口から聞こえてきた。しまった。鍵をかけていた。部屋の戸が開いて、傀が顔を覗かす。 「お、ここか。わりぃ、押して開かなかったから軽く蹴ったら外れた。どうすりゃ普通に開くんだあの戸は」 チャイムを鳴らすか、鍵のかかっていないときにノブを回して引けば普通に開く。ここはさほど古くないはずだが、不良が軽く蹴った衝撃で外れるのか。防犯の「ぼ」の字も無いな。 俺は、本当は傀が99%の力で殺気を帯ながら蹴ったことは知らなかった。それでも外れるのは困るが。 「で、猫はどいつだ」 傀が室内を見回す。 「み、み…みミ、ギナー…ふ、フーッ」 戸が外れた音に飛び跳ねて驚き、四肢が動かなくなっている猫は、傀を警戒しているのか鳴いて威嚇したが、そのせいで傀に気づかれ、目が合うと震え出した。 「なんか怯えてねぇか?」 「そりゃまぁインパクト強すぎでしょ」 「猫殿ぉ、大丈夫でござるよぉ。傀も猫を食ったりはしないでござるからなぁ」 久親が猫を落ち着かせようと近寄ると、猫は急いで懐に入った。 「…とりあえず、お前猫に謝れ」 「は?」 「いーから」 言うと傀は不満そうな顔をしながらも、久親の抱いている猫の前にしゃがんだ。 「あー…わりぃ。何かよくわかんねぇけど悪かった」 「ふ、フシャーッ!」 久親に抱かれているからか、今度の威嚇は少し力強い。それでも可愛いと思ってしまう程度だが。 「許してくれそうにないんだが」 「そうだな。許してもらえるまで謝れ。どうしても連れて帰ってもらうからな」 「日ぃ暮れるぞ」 「撫でてみてはどうでござろうか?」 「いや、それは普通に無理じゃない?」 「物は試しだ。やってみろ」 「はぁ?」 言いながらも傀は猫に手を伸ばす。すると逃げ場の無くなった猫は 「ミギッ!」 勇敢にも手を出した。しかし残念なことに。 「ッ!」 寸でのところで傀が手を引き、かすりもしなかった。 「っぶねー」
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