0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ミギナー?」
猫じゃらしをくわえたまま、猫がベッドの下から顔を出す。首を傾げているのが可愛すぎる。
「飼い主見つかったって。よかったね」
上から覗き込んで言う鶻を、猫が名一杯首を持ち上げて見る。よくわかっていないようだ。
「傀はいつ頃参るのでごさ――」
ドコォン!!
そんな音が入口から聞こえてきた。しまった。鍵をかけていた。部屋の戸が開いて、傀が顔を覗かす。
「お、ここか。わりぃ、押して開かなかったから軽く蹴ったら外れた。どうすりゃ普通に開くんだあの戸は」
チャイムを鳴らすか、鍵のかかっていないときにノブを回して引けば普通に開く。ここはさほど古くないはずだが、不良が軽く蹴った衝撃で外れるのか。防犯の「ぼ」の字も無いな。
俺は、本当は傀が99%の力で殺気を帯ながら蹴ったことは知らなかった。それでも外れるのは困るが。
「で、猫はどいつだ」
傀が室内を見回す。
「み、み…みミ、ギナー…ふ、フーッ」
戸が外れた音に飛び跳ねて驚き、四肢が動かなくなっている猫は、傀を警戒しているのか鳴いて威嚇したが、そのせいで傀に気づかれ、目が合うと震え出した。
「なんか怯えてねぇか?」
「そりゃまぁインパクト強すぎでしょ」
「猫殿ぉ、大丈夫でござるよぉ。傀も猫を食ったりはしないでござるからなぁ」
久親が猫を落ち着かせようと近寄ると、猫は急いで懐に入った。
「…とりあえず、お前猫に謝れ」
「は?」
「いーから」
言うと傀は不満そうな顔をしながらも、久親の抱いている猫の前にしゃがんだ。
「あー…わりぃ。何かよくわかんねぇけど悪かった」
「ふ、フシャーッ!」
久親に抱かれているからか、今度の威嚇は少し力強い。それでも可愛いと思ってしまう程度だが。
「許してくれそうにないんだが」
「そうだな。許してもらえるまで謝れ。どうしても連れて帰ってもらうからな」
「日ぃ暮れるぞ」
「撫でてみてはどうでござろうか?」
「いや、それは普通に無理じゃない?」
「物は試しだ。やってみろ」
「はぁ?」
言いながらも傀は猫に手を伸ばす。すると逃げ場の無くなった猫は
「ミギッ!」
勇敢にも手を出した。しかし残念なことに。
「ッ!」
寸でのところで傀が手を引き、かすりもしなかった。
「っぶねー」
最初のコメントを投稿しよう!