Part1&人物紹介

2/11
前へ
/100ページ
次へ
『日常』  校内で1番の身長の低さ。凜とした黒髪。童顔で愛くるしい笑顔。いわずともしれなた遠野高校校長--久里浜モグ太。  その校長先生の流れるような筆が止まった。  開ききった窓の災い。校長先生が記入していた書類の束が、いく筋の風の道にさらわれた。  それを見た生徒たちが、単音を響かせて天井を見上げた。 「あ~、校長先生、邪魔しないでよね。もう。飛行船のビラチラシじゃあるまいし」   「ごめんなのだよ」  風に踊る紙切れに十指の指が踊る。真っ白な用紙に手がかかった。 「ちょっと待て。なんで校長、自分で集めないの? なんでニヤニヤしながら見てるんだよ」 「下々の仕事だからなのだよ」  ニヤニヤ顔を崩さずに校長先生は言いきった。 「おまえ~!!」  そう言いつつ下々の働きで、生徒が用紙を手渡した。用紙がクシャっとしたのは無意識にだろう。 「ほらほら、じゃあ皆さん授業に戻りますよ。集中して~」  先生が号令をかけると、生徒たちが黒板に向き直る。教室に穏やかな波が戻った。 「あっ、スマンなのだよ」  また風によって書類が舞った。 「もういいかげん校長室に帰れよ!!」  校長先生が教室に住み着いてもう三ヶ月も経っていた……。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加