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『デフレです』
「ねえ、校長なんで教室にずっといるの?」
身長は180センチあるが、あとは至って普通の横田啓太が疑問をぶつける。
「わかってないのだよ、君は。いいかよ。入学式からの~、校長話長いからの~、クラスで自己紹介からの~はもうデフレ状態なのだよ」
入口が混み合っていると、なかなか目立たなくなってしまう。これぞ構造改革。
「なんの話ですか」
啓太があっけらかんとする。もう二ヶ月近くも1-Aに寄生している。
「裏側の話なのだよ。スタート被りはもうやりたくないのだよ」
スタートからのハンディキャップで、楽をして走りたい。それが校長先生の願いだった。
「訳がわかりませんが、校長室に帰ってくれないんですね」
啓太がぶわっという顔をする。今にも人間の純な液体を流してしまいそうだ。
「別に帰ってもいいのだよ」
校長先生がしれっと答えた。絶対などこの世には存在しないのだ。
「えっ、本当ですか?」
校長先生が手を差し出す。
「300万で立ち退いてやるのだよ」
「どこのヤクザだよ」
啓太は明後日の方角を眺めた。
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