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『校則違反』
朝の時間。まばらに生徒が集まりだしていた。その中に一際目立つ男子生徒がいた。
「ねえねえ、この髪ちょーイケてない? ずっとしてみたかったんだよなー」
クラスのイケメンチャラ男、藤谷東吾が髪を金髪にしてきていた。
「いや、それはダメでしょ。ついでにいうとデーブスペクターを思いだした」
啓太が手を振る。学生という身分で、その髪色が許されることなどない。親友が殺されて怒った時くらいだ。
「てか校長になんていうのさ。教室に来るんだよ」
啓太がたずねる。登校時刻終了まであと少しだ。
「校長なら大丈夫でしょ。意外に話わかるし、童顔だし」
「最後の根拠関係なくない、確かに童顔だけど」
無意味な根拠に、啓太と東吾は笑った。背後に殺気がはしる。
「なんのはなしー?」
にこやかな校長先生が立っていた。しかし、これほどまでに笑顔に恐怖を感じたことがない。
「こっ校長。おはようー」
啓太と東吾が慌ててお辞儀する。どうやら聞かれてはなさそうだ。
「あれっ、外国人?」
「はい、外国人でーす。イエーイ」
東吾がイキイキと答えた。笑って明るくすればなんとか。
「校則では金髪は欧米に強制送還する決まりがあるのだよ」
ならなかった。
「……明日、染め直します」
「いや、それじゃ遅い。僕が切ってあげるのだよ」
校長先生がハサミを取りだした。それも二刀流である。
「えっ、いやいや。そんな校長のお手をわずらわせるわけには、なんでハサミ持って、やめてー」
校長先生が東吾を椅子に縛りつけた。人質になったかのようにさるぐつわを噛まされる。
「大丈夫なのだよ。僕は童顔なのだから」
第二のシザーマンが生まれた。
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